付喪神美郷の蔵書紹介 序章
ここは郷邑の街の西側、言霊図書館。
一生かけても読み切れないほどの本と資料が眠っている。
館長の朽木与幸と、そのお手伝いで辞書の付喪神、美郷。そしてたくさんの言霊たちがここに居る。
そしてある日……。
美郷「うーん……」
幸「そんな難しい顔して、何を悩んでるの?」
美郷「暇つぶしになると思って郷邑の地の伝承を調べてるんだけど……」
幸「暇つぶしねえ……」
美郷「それでなんだけど幸さん。この伝説たちは本当なのかい?」
幸「うーん、私の口からもはっきりとは言えないわ。ただ、不可思議な点があるのも事実なのよね」
美郷「なるほど……調べてみる価値はありそうじゃないか」
美郷「さあ伝説ども。素晴らしい暇つぶしになってくれよ?」
幸は美郷を止めようとはしなかった。好奇心の笑みを浮かべた時にはもう全てが動き始めているのだから。
眠る伝説に心を躍らせ、美郷は今夜も眠らない。