始演堂 本編

第一章 大海知らずは地中を泳ぐ ――シエカバネ 地下

♪奥深き地下の要石

千鶴「ところで今はどこに向かって進んでるわけ?」

涼「今向かってるの?「要石発電機」ってやつだね。」

涼「地震の衝撃をある程度エネルギーに変換して電力にする凄い機械!」

涼「あれのおかげで震度を2減らせる、つまりエネルギーを1000分の1にまで落とし込めるっていうから凄いんだよね」

涼「ただその機械が故障してるっぽくてー」

――目的の場所に辿り着いたようだ。

涼「……うわあ、結構年季が入ってる」

千鶴「なんか割とプレハブ小屋みたいな見た目してるのね」

千鶴「そういえば、なんで依頼主はこの機械の修理を私たちに任せたわけ? 作った人にやらせればいいじゃない」

涼「忙しいんだと思うよ~多分」

涼「それじゃ私これ直してるから周りに人が近づかないようにしといてね。万が一なんかあったら危険だし」

千鶴「はーい」

?「うむうむいい題材になるなぁ」

?「鯰飛び込む土の音。そうだな、古池や鯰飛び込む土の音」

松葉「この機械も時の風によって古と化す。それと同じように時代の流れは無常だなあ」

千鶴(こんなところに一般人? 不審者かもしれないな)

千鶴「もしもーし」

研山「おや、旅の者か。私の名は松葉研山。俳人としては松葉(まつば)を名乗っている」

千鶴「……は、はぁ」

松葉「この機械を見るがよい。良き俳句の題材になるじゃろ。この地を守りし要も時代の流れには逆らえず、古の物となる」

涼「今から修復するから古には出来ないんだなあ」

松葉「おお、それはそれは良いことで」

松葉「今日の句会に持ち込む句はこれでよかろう」

松葉「それでのう、旅の者よ。今こそ新政府となれど、以前の幕府は大変じゃったんじゃぞ」

千鶴「うん」

松葉「私ら句会も活動を抑制され、自由な句が読めぬ時期もあったんじゃ」

千鶴「はい」

松葉「さらには鎖国によって外界との連絡手段はほとんどなかったんじゃ」

千鶴「あー」

松葉「その時詠んだ句がこれじゃ」

松葉「意図紡ぎ網あげた布の中ぞ恋しき」

千鶴「……」

松葉「そうそう、折角の旅の者じゃ、ひとたびお手並みを拝見させてもらいたいのう」

千鶴「はいぃ?」

松葉「俳人松葉、いざ参ろう」

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第一章 ボス

風化を詠む俳人
松葉 研山
Matsuba Kenzan

♪無常な心に映る時代

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涼「ふう、意外と大変だった。修理終わったよ~!」

千鶴「お疲れさーん、こっちも今終わったところ」

涼「よし、じゃあ次は空まで行って雷を押さえに行こう!」

千鶴「まだあるんだ……」

大地の要石&要石発電機

この石は元々シエカバネ地下に埋まっていた。地震を抑えられる力が見つかったのは約二年前のことである。
発見された当時には徳川は見向きもしなかったらしいが、有志によって「大地の要石」として利用しようと研究開発が始まった。
その後更に開発・研究が進み、地震を抑える力の強化並びに発電能力が加えられ「要石発電機」として地震のエネルギーを1000分の1にまで落とせるようになった。
しかし、いくらエネルギーが小さくなれど0にはならない。